調べものに関するさまざまな誤解

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こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。

すみませんが今日は(も?)辛口記事です。

私の講義では「調べ物の過程を共有したいので、訳出根拠も書いてください」とお願いすることがあります。すると稀に「ネットで見ました/調べました」と書く方がおられます。これ、よく考えてほしいのですが、「ネット」だけでは余りに漠然としているので根拠にはなり得ません。「どこの何を見て、どのように判断したのか」が大事なので、やはり具体的な書籍なりサイトなりを挙げてほしいところです。

またある時には「ここを見れば必ず訳語が分かる有用なwebページが知りたい」という質問が出ることもあります。これもよく考えてほしいのですが、それくらいの簡単な話なら、わざわざお金と時間をかけて外注する必要はない...とは思いませんか。

上の2つは極端な例ですが、翻訳の学習でとくに誤解が多いのが「調べ物」だと思います。翻訳者に必要なスキルとしてよく挙がるにもかかわらず、検索窓に何らかのキーワードを入力して、表示されたページを何となく読むことが「調査」だと勘違いしている学習者さんが多いようです。プロならではの魔法のような方法があるに違いない、と変な期待を抱いている方もいらっしゃいます。

誰もが無料で検索し参照できる情報は、数多あれど、玉石混淆です。用途も意図も有用性もバラバラです。Googleの思惑も絡んで、上位に表示されるから信頼が置けるとも限りません。無限にある情報の中から、文脈や想定読者や文書の目的に沿った最適解を見極め、選び取る力のほうがよほど重要です。得られた情報が役に立ちそうなのか、今回は違うのかは、ベースとなる医薬の専門知識があって初めて判断できるのだと思います。出身が理系か文系かは関係ありません。書かれた内容を理解するための知識は、もちろん後からでも積み上げ可能です。ただし、無料の情報だけに頼るやり方では限界があると思います。

翻訳者には語学力も専門知識も大事ですが、医薬分野では専門知識のウェイトが大きいと思います。語学力が足りなくても補えるという意味ではありません。語学力はあって当たり前で、差がつきやすいのは専門部分。評価されやすいのも、専門のほうに分があるかもしれません。繰り返しますが、語学力は「あって当たり前」です。

ですから私なら、医薬翻訳者に必要なスキルを聞かれたら「読む力」「専門知識」「書く力」と答えます。3つとも必要で、どれが欠けても上手くいかないと思います。

 翻訳に限らず、何か目指すものがあったら、その世界で活躍している人たちがやってきたことを同じようにやってみるのが第一歩です。さらに「その他大勢」から抜けるには、皆がやっていることは当たり前にした上で、人がやらないところまでやってみる。これだけだと思います。

その過程で「とてもそこまではやってられないなぁ」と思うなら、趣味にとどめておくのが賢明でしょう。「頑張ります」「努力します」という言葉も要注意です。「努力」を奮い起こさないとできないうちは、ちょっと厳しいかもしれません。習慣レベルにまで落とし込めるかどうか、なのだと思います。ここまでくれば、後は続けるだけです。好きなこと、向いていること、楽しいと思うことなら、そんなに大変な話ではないと思います。

それではまた。