在宅翻訳、それぞれの道のり

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こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。

今回は、私がどうやって在宅のフリーランス翻訳者として実績を上げてきたかを話してみたいと思います。ただし、あくまで個人の体験談です。今と昔では違う部分も多々あると思うので、参考程度にご覧ください。

それではどうぞ。

前髪をつかめなかった私の話

まだスクールにも通う前、場違いにも翻訳者が集まるオフ会に参加したことがあります。実際にプロとして活躍している方から直接話を聞きたかったからです。なかには学習者など眼中にないという様子の方もいましたが、「折角なので名刺交換しましょう」と気さくな方もいらっしゃいました。

その年末だったと思います。知らない番号から着信がありました。当時は只の会社員で、普段なら登録のない番号には反応しません。おそるおそる出ると、小さな翻訳会社を経営している方からの「生化学の案件があるので、良かったらやってみませんか」という話でした。翻訳者が足りなくて探していた訳ではなく、ふと思い出して声をかけてくれたのだそう。情けないことに、責任の重さと自信のなさから怯んでお断りしてしまったのですが...

せっかくのご厚意をきちんと受け取れなかったことは今でも悔やまれます。何より申し訳なく思います。でも「学習中でも名刺はあったほうがいい」というアドバイスは本当だったなぁと思いました。期待しすぎもよくありませんし、何もないことのほうが多いでしょうが、忘れた頃に思いがけないことが起こるかもしれません。自分が何者であり、何が得意なのか、はっきりさせておくことも大事だと思いました。

私にとっては、和文英訳が鍵だった

結局、私は正攻法でトライアルを受け続けました。オンサイトも視野に入れていましたが、ご縁がありませんでした。合格しても何の音沙汰もない会社もありましたが、幸運なことに、間を置かずに発注のあった会社もありました。後付けの推測に過ぎませんが、登録時期が繁忙期の少し前であったことや、日英翻訳メインに学習してきたことが有利に働いたのだと思います。とくに当時は和訳者より英訳者のほうが足りていなかったので、声がかかりやすかったのでしょう。今とは状況が違うと思いますし、英日翻訳だけでは難しいという話ではありません。やり方は人それぞれです。ただ、私はこうだった、というだけの話です。

そうこうして得た最初の翻訳案件は、得意ど真ん中という訳にはいきませんでしたが、前述の反省もあって「次にチャンスをいただけたら、絶対に受けて立つ!」と決めていたので、覚悟をもってお引き受けしました。

ゼロイチとその後の積み上げ

仕事を得るにはトライアルばかりが道ではありません。かといって紹介も人によるのではないでしょうか。最初から人脈に恵まれた方ばかりではないと思います。私も実績ゼロ、人脈ゼロからのスタートでした。

ですから私はとにかくトライアルを受けました。まずは10社合格を目指しました。達成できたら次は20社合格を目指しました。途中から軌道修正し、トライアルなしでも新規開拓できることを目標に据えました。

いま思い返すと、あんなに沢山受ける必要はなかったのですが(実際に仕事を受注すると2社くらいで手一杯になるので)、選択肢が多いほうが条件のよい所を選んで契約できるので、その点は良かったと思います。

目標達成のために取った行動も至ってシンプルです。1年目はあらゆるサイトや媒体で翻訳者の募集情報を探しては「トライアルを受けたい」と申し込んでいました。案件の打診があれば時間の許す限り仕事をしました。1件受注するごとにExcelファイルに疾患領域や文書種類、文字数やワード数を記録しておき、実績合計が100万ワードに達する日を楽しみにしていました。2~3年目からは少しやり方を変えて、翻訳者ディレクトリとJATのディレクトリに名前と履歴を載せて「ウチのトライアルを受けてください」と連絡があった会社に返答するようにしました。

翻訳会社に履歴書と実績表を送ると「ではトライアルを受けてください」となるのが普通だと思います。この前後で秘密保持契約を締結する場合もあります。トライアルに合格すれば登録です。ところが実績総計が100万ワードを超えたあたりから「では頼みたい仕事があるので契約と登録をお願いします」に変わってきました。そうなるようにと意図的に分野領域を選んできたからです。何も考えず手当たり次第に100万ワード...でも良かったのでしょうが、私は自分で自分の実績をデザインしてみました。自身の守備範囲と市場の傾向を分析すれば、自ずと指針が見えてくると思います。得意と需要の一致するところ、伸びそうなところ、手薄なところ。

「得意」と思ってもらうからには、誰よりも得意である必要があると思いました。そのためにも品質を上げようと、裏では必死でもがいていたと思います。当時の私はセミナーオタクでもあり、他分野に比べて高額な医学専門書への投資もまったく惜しみませんでした。そうした投資は必ず回収しようと心に決めていましたし、事実、回収しました。トントン拍子に上手くいくことばかりではありませんでしたが、大枠としては、そういう方向性でやってみました。

結局一番大事なものは

ただしこれまでの話は、よく言われる「鬼に金棒の金棒の部分」だと思います。大事なのはベースです。これは間違いありません。装飾だけを頑張っても、根本的なところが弱ければ、遅かれ早かれ市場からは淘汰されます。実際に、そのようにしていつの間にか消えてしまった人は何人もいます。結局は実力と人。十分な実力があって、切れ目なく反省と改善を続けていく前提で、最後は人だというのが実感です。私もまだまだ発展途上の身ですから、自分を磨く努力は怠っていないつもりです。

それから、翻訳会社といっても玉石混淆なので注意は必要です。良心的で長くお付き合いできそうな会社もありますが、そうでない所もあります。フリーランスとして仕事をしていく以上、あやしいものをあやしいと嗅ぎ分ける嗅覚も大切です。少しでも嫌な感じがしたら、深入りしないのが無難でしょう。安易に個人情報を渡さないなど、自分なりの防衛手段も必要になってくる場合もあると思います。

それではまた。