こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。
今回は「~に準じる」を英語に翻訳するときにどのような工夫ができるか、考えてみたいと思います。
まずは、ICH ガイドライン(ICH-E3)からの引用です。
治験責任医師等の氏名,所属,治験における役割及び資格(履歴書又はそれに準じるもの)の一覧表を付録16.1.4に添付すること。
There should be provided in appendix 16.1.4, a list of the investigators with their affiliations, their role in the study and their qualifications (curriculum vitae or equivalent).
日本製薬工業協会(製薬協)の資料を参照すると、ここにも「~に準じて」という表現が使われています。
重篤な有害事象 SAE とは
有害事象のうち、以下のいずれか1つ以上に該当する事象です。
・死亡・死亡のおそれ
・入院又は入院期間の延長・障害・障害のおそれ
・上記に準じて重篤
・先天異常
http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/allotment/pdf/medical_training_29.pdf
同ページに「<参考資料>統一書式(書式12-1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」施行規則273条」とあります。そこで、厚生労働省のホームページから「書式12-1:重篤な有害事象に関する報告書(医薬品治験)」を確認してみます。
新たな「治験の依頼等に係る統一書式」の一部改正について(平成26年7月1日付通知)
すると「重篤な有害事象に関する情報―重篤と判断した理由」の欄に
□死亡
□死亡のおそれ
□入院又は入院期間の延長
□障害
□先天異常
□上記に準じて重篤
とあります。ここにも「~に準じて」が登場しています。
次にFDAの定義を見てみましょう。FDAでは、SAE をこのように定義しています。
Death
Life-threatening
Hospitalization (initial or prolonged)
Disability or Permanent Damage
Congenital Anomaly/Birth Defect
Required Intervention to Prevent Permanent Impairment or Damage (Devices)
Other Serious (Important Medical Events)
What is a Serious Adverse Event? | FDA
日本では、どのように定義されているのでしょうか。ICH-E2Aの「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を見てみましょう。
a. 死に至るもの
b. 生命を脅かすもの
c. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの
d. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの
e. 先天異常を来すもの
https://www.pmda.go.jp/files/000156127.pdf
「~に準じて」は消えてしまいました。
さらに、E2D「承認後の安全性情報の取扱い:緊急報告のための用語の定義と報告の基準」も確認してみましょう。
(1) 死に至るもの
(2) 生命を脅かすもの
(3) 治療のための入院又は入院期間の延長が必要であるもの
(4) 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの
(5) 先天異常・先天性欠損を来すもの
(6) その他の医学的に重要な状態と判断される事象又は反応
https://www.pmda.go.jp/files/000156940.pdf
やはり「~に準じて」とは書かれていません。
もう一度FDAに戻り、今度は、FDA Adverse Event Reporting Systemでの記載内容を確認したいと思います。
Did any of the following happen? (Check all that apply)
Hospitalization - admitted or stayed longer
Required help to prevent permanent harm
Disability or health problem
Birth defect
Life-threatening
Death (Date of Death) (mm/dd/yyyy)
Other serious/important medical incident (please describe)
MedWatch Online Voluntary Reporting Form
いかがでしょうか。以上をヒントに皆さんも考えてみてください。