こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。
「第8回産業日本語研究会・シンポジウム」に参加しました。
産業日本語とは?
産業日本語とは「人間が理解しやすく機械が処理しやすい日本語」と定義されています。
人工知能(AI)や機械翻訳(MT)で処理しやすい日本語を用意できれば、他言語への翻訳が容易になりますから、ことばの壁を感じることが少なくなり、コミュニケーションも図りやすくなります。
機械で処理しやすい日本語とは、決してぎこちない日本語などではなく、とくにビジネスシーンで人間にとっても読みやすく相手にも伝わりやすい日本語を目指しているのだそうです。
メリットいっぱいに見える「産業日本語」ですが、日本人だから誰でも書けるのかといえば、決してそうではないのだそうです。それなりのトレーニングを受けないと書けるようにはなりません。
とくに最近では学生の国語力低下も心配されています。そのため企業によっては新人研修に「文章読解・作成力検定」(日本漢字能力検定協会)を取り入れているのだそうです。
美しい日本語と機械処理しやすい日本語と
味のある文章や日本語らしい日本語(と思われている文章)と、伝わりやすく分かりやすい日本語は、ほとんどの場合に一致しません。
ですから、生まれながらの日本人でも母語を読む力と書く力の訓練は、仕事を円滑に進めていくうえで欠かせないのだそうです。
仕事の世界で必要とされるのは「短く、分かりやすく、伝わる文」文章であって「自由に思いのままに書かれた文章」ではない。
といっても、日本語らしい日本語が否定されている訳ではありません。
どちらも大切な「ことば」です。
シンポジウムでは、美しい日本語も残しつつ、読ませる、伝わる、ロジカルな日本語も考えていきたい、としていました。
ブログなどは自由に書いてよい典型だと思いますが、制約のあるロジカルな日本語を必要とする世界もあるのです。
読みやくする一例
ひとつ、セミナーで説明があった例文をご紹介したいと思います。
「...災害発生時に直ちに防災ヘリコプターが運航できるように、...」
※第二部に登壇された東京大学大学院 教育学研究科の宮田 玲氏の発表から一部だけお借りしています。
機械で処理しにくい、正しくない日本語の例です。
どこが問題か分かりますか?
問題は、目的語である「ヘリコプター」に「が」を使っている点。
正解は「...災害発生時に直ちに防災ヘリコプターを運航できるように、...」とのこと。
ちなみに翻訳者必携とも言われる「Just Right!」という文章校正支援ツールがありますが、セミナーで紹介された例文を Just Right! にかけても、エラーとしては何も検出されません。デモンストレーションで紹介された機械翻訳ではすべて検出されるエラーした。
作業は機械が行うとしても、ルールを決定するのは人間なので、やはり自分の頭と目で気付くことが何よりも大事なのだと思います。今後の方向性を含めていろいろと考えさせられました。途中休憩のないタイトなセミナーでしたが、聴講できて良かったと思います。