登壇報告&2019年振り返り

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こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。

ブログ更新がすっかり滞っていましたが、セミナー登壇のご報告と、簡単に2019年を振り返っておきたいと思います。

JTF翻訳セミナーに登壇いたしました

まずは12月11日のJTF翻訳セミナーです。分野横断型と違って医薬の分科会であること、複数人のパネリスト形式ではなく単独での登壇、さらには繁忙期である年末開催もあって、そこまでの大人数は集まらないのではないか...というのが当初の見込みでした。が、蓋を開けてみれば、まるで想定外でした。何よりも反響の大きさに登壇した本人が一番驚いています。素晴らしかった、感激した、と声をかけてくださった方。宝の山のような情報をいただけた、と喜んでくださった方。改めて、参加者の皆さまと、準備に奔走してくださった事務局や理事の皆さまに、心より感謝申し上げます。

セミナーの前後や懇親会でも多くの方とお話できたと思います。その中で「私も昔、似たような状況で悩んでいたなぁ」と懐かしく思い返すこともありました。仕事を受注できるようになり嬉しい反面、依頼はできるだけ断りたくない、でもそうすると勉強の時間が減ってしまう...と悩んでいる方。特許翻訳と治験翻訳の両方を勉強していたけど片方に絞って頑張る、と決意を語っていた方も。

実は私にも、医薬翻訳と並行して特許翻訳も手がけていた時期があります。もともとは特許翻訳を学んでいたので。でも、やはり両立は大変でした。いずれはどちらかを選ばないといけないなぁと思っていたところに、図ったように明細書と医薬案件の依頼が重なり、私は医薬を選びました。以来、特許の仕事は請けていません。

また、駆け出しの頃の私は、調べ物にも訳出にも見直しにも、要するに何をするにも人の3倍も4倍も時間がかかるのが常でした。それでも自己投資の時間は削ってはいけないと強く思っていたので(決して褒められたことではありませんが)ひどい寝不足のまま勉強会やセミナーに参加するようなときもありました。

翻訳者や学習者の皆さんが抱えている悩みは、きっと誰もが通る道なのだと思います。活路は人それぞれでしょうが、「あのとき頑張っておいて良かった」と思える時期がやってくるはずですし、そうなれるように気を抜かない、手を抜かないことも大事なのではないかと思います。

当日の構成をどうするかは、随分悩みました。普段の授業と違って、さまざま立場の方が参加するセミナーです。勉強中の方、すでに医薬翻訳者として稼働している方、ベテランさんや他分野の翻訳者さん、法人で営業をしている方にも「勉強になった」「楽しかった」と思っていただけるよう、工夫をしたつもりです。後日の感想やアンケートを拝見する限りは、好評だったようで一安心しています。スライドには載せず口頭で話しただけの言葉を引用して「とても共感した」と書き送ってくださった方もいて、伝えたかった内容はきちんと届いたようでした。

2019年振り返り

では簡単に2019年を振り返っておきたいと思います。

今年は、スクール講師の仕事がなくなる分、純粋に自分の仕事に集中できるはず…でしたが、思いがけずも講師の仕事は続いていました。来年には、また新しい講座をお届けできる予定です。来春頃にはご案内できるかと思います。1年以上かけて準備を進めてきていますので、どうぞお楽しみに。

本業は、相変わらず医薬翻訳とメディカルライティングの2本立てです。直接取引の割合が増え、結果的に収益も順調に上がりました。伸び率としては今年が1番だったかもしれません。分野としては、新たに専門と呼んでもよいような疾患領域ができつつあります。3か年計画で来年にはひとつステージを上げることができるよう、引き続き経験値を積み上げていきたいと思います。

それでは、皆さまもどうぞ良い年の瀬をお過ごしください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

調べものに関するさまざまな誤解

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こんにちは。メディカル翻訳者&メディカルライターの山名文乃です。

私の講義では「調べ物の過程を共有したいので、訳出根拠も書いてください」とお願いすることがあります。すると稀に「ネットで見ました/調べました」としか書かない方がおられます。これ、よく考えてほしいのですが「ネット」だけでは余りに漠然としているので、根拠にはなり得ません。「どこの何を見て、どのように判断したのか」が大事なので、やはり具体的な書籍なりサイトなりを挙げてほしいところです。

またある時には「ここを見れば必ず訳語が分かる有用なwebページが知りたい」という質問が出ることもあります。これもよく考えてほしいのですが、それくらいの簡単な話なら、わざわざお金と時間をかけて外注する必要はない...とは思いませんか。

上の2つは極端な例ですが、翻訳の学習でとくに誤解が多いのが「調べ物」だと思います。翻訳者に必要なスキルとしてよく挙がるにもかかわらず、検索窓に何らかのキーワードを入力して、表示されたページを何となく読むことが「調査」だと勘違いしている学習者さんが多いようです。プロならではの魔法のような方法があるに違いない、と変な期待を抱いている方もいらっしゃいます。

誰もが無料で検索し参照できる情報は、数多あれど、玉石混淆です。用途も意図も有用性もバラバラです。Googleの思惑も絡んで、上位に表示されるから信頼が置けるとも限りません。無限にある情報の中から、文脈や想定読者や文書の目的に沿った最適解を見極め、選び取る力のほうがよほど重要です。得られた情報が役に立ちそうなのか、今回は違うのかは、ベースとなる専門知識があって初めて判断できるのだと思います。出身が理系か文系かは関係ありません。書かれた内容を理解するための知識は、後からでも積み上げ可能です。ただし、無料の情報だけに頼るやり方では限界があると思います。

翻訳者には語学力も専門知識も大事ですが、医薬分野では専門知識のウェイトが大きいと思います。語学力が足りなくても補えるという意味ではありません。語学力はあって当たり前で、差がつきやすいのは専門部分。評価されやすいのも、専門のほうに分があるかもしれません。

ですから私なら、医薬翻訳者に必要なスキルを聞かれたら「読む力」「専門知識」「書く力」と答えます。3つとも必要で、どれが欠けても上手くいかないと思います。

 翻訳に限らず、何か目指すものがあったら、その世界で活躍している人たちがやってきたことを同じようにやってみるのが第一歩です。さらに「その他大勢」から抜けるには、皆がやっていることは当たり前にした上で、人がやらないところまでやってみる。これだけだと思います。

その過程で「とてもそこまではやってられないなぁ」と思うなら、趣味にとどめておくのが賢明でしょう。「頑張ります」「努力します」という言葉も要注意です。「努力」を奮い起こさないとできないうちは、ちょっと厳しいかもしれません。習慣レベルにまで落とし込めるかどうか、なのだと思います。ここまでくれば、後は続けるだけです。好きなこと、向いていること、楽しいと思うことなら、そんなに大変な話ではないと思います。

それではまた。